福島第一原子力発電所の事故を描いた映画『Fukushima 50』が公開
福島第一原子力発電所の事故を描いた映画『Fukushima 50』(若松節朗監督)が3月6日公開される。
2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で、未曾有の事態を防ごうと現場に留まり奮闘し続けた人々の知られざる姿を描いたヒューマンドラマ。
想像を超える被害をもたらした原発事故の現場に残り、世界のメディアから“Fukushima 50”と呼ばれた地元福島県出身の作業員たちが、愛する家族と日本を守るために死を覚悟して立ち向かう姿が展開していく。
※上映劇場によって、営業時間、チケット購入方法に変更が出ておりますので予めご確認をお願いします。 pic.twitter.com/xM2ZAIJCVe
映画『Fukushima 50』(フクシマフィフティ)予告編
「よく出来ている」と震災当時の再現度に評価
金も時間もかけている。津波はCG。福島第一原発もリアルに再現。原発内もよく出てきている。事故のことも、とてもよく調べて再現。
それでいて専門知識がなくても分かる表現。退屈させないスピーディな展開。感動の場面もある。俳優も熱演。
凄まじい事故だということ、原発内部の構造がよく分かる。そして、現場の職員たちの危機感もよく伝わってきた。よくぞ、日本は無事だったと思う。
冒頭から3.11の記憶が戻ります。
緊張感がずっと止まりません…
堅苦しい邦画と思っていましたが、見やすく分かりやすい。
映画としての見応えもあり面白くできています。
これからも経験するだろう地震のために観てほしい。
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一方で…一部の人物の描き方に違和感…?
全てがよく出来ているのだが、色々と疑問が残る。ひっかかるものがある。
吉田所長も東電も実名で出てくる。ただ、あるべき事実で描かれていないものがある。ここは難しい。その事実を描くのも描かないのも作家の選択。だが、その事実を描かないことで意味が違ってしまうことがある。その代表が菅直人総理。
この映画での「総理」は、かなり浮いている。彼だけが熱くなり、ヒステリックにわめきちらしている。
「総理大臣」の描き方は、何か意図的に「事実」を歪曲、あるいは無視している。
映画では官邸が邪魔ばかり、東電本社は翻弄。現場は大混乱という描き方。だが、当時、東電は官邸に情報を上げず、そのことで総理は苛立ち、現場に乗り込んだ。その辺の背景も描かれていない。
巧妙なことに、この映画の配役表では、佐野史郎が演じているのは「内閣総理大臣」であって、「菅直人」ではない。万一、抗議されても、「あくまで『総理大臣』であって、『菅直人』を演じたのではない」と言い逃れできるようになっている。
また、「総理大臣」以下の政治家や関係者も「内閣官房長官」「経済産業大臣」「原子力安全委員会委員長」「原子力安全・保安院院長」などは、役職名として登場するだけで、個人の名はない。
観客は、吉田所長という人物が実名で登場するので、この映画はすべて「事実」に基づいていると思うだろう。だが、映画は、官邸側の人物を実在の人物として描くことから逃げている。
この映画は門田氏の原作をもとにし、東電側には改めて取材しているようだが、菅首相サイドには取材していない。
出典 映画『Fukushima 50』はなぜこんな「事実の加工」をしたのか?(中川 右介) | 現代ビジネス | 講談社(5/5)
事実と異なる点も…
東電、吉田所長は、実名で登場する。誰がどう見てもノンフィクション。。日時、時間も正確だ。が、ベントが遅れる原因を「総理が福1を訪れたから」と描いている。
これは当時流されたデマであり、事実ではない。のちの裁判でも確認されている。なのに、そのデマを否定せず事実のように描いている。
総理の視察とベントの遅れとの因果関係は、何種類も出た事故調査委員会の報告書で否定されている。遅れたのは、手動でやらなければならず、準備に時間がかかったからで、これはこの映画でも詳しく描かれている。
さらに炉心を冷やすために塩水を使うのを止めようとしたのは「官邸の指示」と映画では描いているが、実際は「東電本社の指示」。塩水を入れると2度と使えなくなるからという理由。「官邸の指示」も当時流れたデマ。これも事実として描く。
それをこの映画でしていいのか? 映画冒頭に「真実の物語」とテロップを出し、エンディングに「この映画はフィクションであり、登場する人物は架空のものです」とは出さない。吉田所長も、東電も実名。つまり、全て真実ーノンフィクションということだよね?そんな作品で事実でないこと。嘘を描く?
→住民の避難を待っていた、また手動でのベントは東電が成功と言った時間には実はできていなかった
②海水注入を官邸が止めた
→東電の武黒がやめさせようとした
③米軍はトモダチ作戦を実施
→トモダチと言いつつ、後日巨額の請求。海兵隊員は被ばく、40人以上死亡
④協力企業の社員に吉田所長が帰ってもらう
→協力企業は事故時契約がないため柏崎刈羽に全員引き上げ
⑤地震だけなら全電源喪失をカバーできた
→地震で外部電源喪失
⑥想定外の津波と2回も
→吉田所長は15.7mの津波の警告を握りつぶした張本人