みんな大好き柑橘類!
ミカン科のミカン属、カラタチ属、キンカン属の植物を総称して「柑橘(かんきつ)類」とよぶ。
柑橘類の果実は食用となる。果実の「爽やかな香り」と「甘酸っぱい味」が特徴。甘い種類は生食・ジュースや製菓材料として、酸味が強い種類は菓子のほか料理の酸味づけとして世界各地で広く利用される。
かつて、柑橘類はデザイナーフーズ計画のピラミッドで2群に属しており、2群の中でも5位中3位に属する、癌予防効果のある食材であると位置づけられていた
しかし「柑橘類はお肌に悪い」と言われ始める
美容を気にする一部の人たちの間で「美肌のため柑橘類を食べない」という動きがあると聞いた。
ある特定のフルーツや野菜は夕方以降に摂った方がいいといわれています。それはソラレンという物質が関係しています。
日焼けしたくない人や、しみをつくりたくない人は、これらを朝から食べたらいけないというのです。私はそんなことは気にしないのでいつでも食べますが、気にする人にとってはけっこう大変なことですね。
まじか・・・
ソラレン(プソラレン)とは
さまざまな植物に含まれるフロクマリンという有機化合物の異性体の一。代表的な光毒性をもつ物質として知られる。化学式C11H6O3 ソラーレン。プソラレン。
フラン環が様々な方法で縮環することによって、いくつかの異性体が生成する。最も一般的な2つの母核構造はプソラレン (psoralen) およびアンゲリシン (angelicin) である。
この化合物はクマリンのベンゼン環にフランが縮合している形をしています。
「ソラレン」と「フラノクマリン(フロクマリン)」を別物の物質として紹介しているメディアが見受けられますが、上記のように「ソラレン」は「フラノクマリン」のカテゴリーのひとつです。
グレープフルーツの果肉に含まれるフラノクマリン類は、様々な医薬品と相互作用(干渉し、意図しない効果を生み出すこと)がある。
ベルガモチン (Bergamottin) やジヒドロキシベルガモチンは、グレープフルーツの薬物相互作用の原因である。
グレープフルーツと一部の医薬品との飲み合わせが良くないことはかねてより言われてきました。
情報の出所は?
柑橘類摂取の皮膚への作用をめぐっては、まず2015年8月、米国臨床腫瘍学会の雑誌『ジャーナル・オブ・クリニカル・オンコロジー』に「柑橘類摂取と悪性黒色腫(メラノーマ)のリスク」というテーマの論文が発表されました。
米国人100,000人超を対象とした食事傾向に関する新しい分析にて、柑橘類(具体的には、グレープフルーツ丸ごとやオレンジジュース)を頻繁に摂取するとメラノーマのリスクが増加する可能性が示唆された
対象者のうち、この約四半世紀に皮膚がんを発症した1840人について、オレンジとグレープフルーツの果実やジュースを飲む頻度や食生活習慣、健康状態などを調査・分析した。柑橘系でもレモンやライムは調査対象外だった。
メラノーマのリスクは、柑橘類の果物やジュースを週に2回未満しか摂取しない場合と比較して、1日に1.6回以上摂取する場合では36%高くなった。
関連性はグレープフルーツで最も強く、次いでオレンジジュースであった。一方、興味深いのは、グレープフルーツジュースまたはオレンジ丸ごとの摂取とメラノーマのリスクとは関連しなかったことである。
それなりの衝撃は感じました。この研究グループは栄養疫学分野では世界でもトップクラスの成果をこれまでいくつも発表してきたグループです。
信憑性高そう…(小並感)
一方で気になる点も・・・
Marianne Berwick博士・公衆衛生学修士は、本試験が大規模であること、またデータを前向きに収集していることを評価している。しかし、同氏は、本試験について注意すべきいくつかの重要な研究の限界点を指摘した。それは、一般集団の代表ではない医療関係者を試験対象としている点である。
「一般大衆に対する現在の食事上のアドバイスを修正する前に、異なる試験集団で本試験の結果を再検証する必要があります」と述べた。
その後、他の研究グループから同様のテーマの論文がまだ出てこない点です。もし、他の研究で同様の解析結果が出れば、あるいは関連性が見られないという結果になっても、他の研究グループから柑橘摂取とメラノーマリスクとの関連について何かしら論文が出るはずです。そうした論文をまだひとつも見ていません。
また、米国人の皮膚がんの実態と比べ、論文での皮膚がん発症数がやや多いことも気になります。
疫学研究では、ひとつの結果だけで評価が固まることはありえません。いくつもの調査が行われ、全体として、食物摂取と病気に関連性があるかが解析されていくものです。
試験結果は興味深いですが、グレープフルーツやオレンジの摂取を大幅に見直すよう推奨するには早すぎます。決定的なデータが示されるまで、日光から皮膚を守るよう注意し続けるべきです
「被験サンプルの属性の偏り」と「検証の未実施」が疑問符を生じさせています。
グレープフルーツの「果実」とオレンジの「ジュース」でのみリスクの相関が見られたという一見するとちぐはぐな結果も気になりますね・・・
みかんなどの「冤罪」も・・・
美容分野のネット記事などでは、「ソラレンを多く含む食べ物」として、グレープフルーツ、ミカン、オレンジなどが挙がっていますが・・・。
柑橘類の中でも、いま説明したフラノクマリンが多く含まれているものと、そうでないものがあります。
同じような柑橘類でもフラノクマリン類を含む量には違いがあり、柑橘類以外でも含まれていることがあります。
出典 大阪国際がんセンター
温州ミカンやオレンジには、フラノクマリンはほとんど含まれておらず、含まれていたとしても極微量です。
また、国内では、ミカンとオレンジの交配品種「清見」や、清見を交配親として育成された「デコポン」などの品種も出回っていますが、これらはいずれもフラノクマリンはほぼ含まれていません。
出典 マスコミの誤解だった「ミカンは肌によくない」
表からわかるようにフラノクマリン類は果汁よりも果皮に多く含まれています。
出典 pdf
少なくとも、ミカンを食べることが肌のシミにつながるということは、あり得ないことです。
柑橘類の抗酸化パワーも忘れないで!
柑橘類には、オレンジやレモンのようにビタミンCやクエン酸が多く含まれている。
生活習慣病の予防などの健康維持への効果が多くの柑橘類に共通してあります。柑橘類には、ビタミンCや葉酸が多く含まれおり、これらが循環器系疾患のリスクを下げることは、これまで多くの研究で示されています。
グレープフルーツやオレンジは心臓病の予防によいという評価もすでに定まっています。
柑橘類は、デザイナーフーズ計画でがん予防に有効性のあると考えられる40種類ほどの野菜、果実類に含められている。
β-クリプトキサンチンも含まれており、ヒトでは、β-クリプトキサンチンはビタミンAに変換されるためプロビタミンAと見なされている。
他のカロテノイドと同様に、β-クリプトキサンチンは抗酸化物質としてフリーラジカルによる酸化的損傷から細胞およびDNAを保護していると考えられている。
柑橘類の有益性は、冠状動脈性心疾患、がん予防および健康上の全般的な影響について認められている。
「柑橘類=肌に悪い」はまだ性急
ハーバード公衆衛生大学院のウォルター・ウィレット博士は「現時点で柑橘系の果物の摂取を止めることは(皮膚がん防止の)賢明な考え方とはいえない」と断言する。
アブラー・クレシ博士も「柑橘系の果物や野菜は健康維持に重要で、摂取量は減らすべきではない」としたうえで、「定期的に新鮮な柑橘系の果物を摂取しながら、野外では必ず日焼け止めや帽子、紫外線防護服を着用するべきだ」と強調した。
経口で摂取されたフラノクマリンが肝臓まで行くのは分かっていますが、その後の血液循環でどの程度が皮膚まで到達し、光過敏症を起こす原因となるのかは、まずまったく分かっていない、というのが現状です。
皮膚がんのリスクが高まるおそれがあるから摂取を控えるというよりも、摂取をしてその他の健康につながる効果を得ることのほうが、身体への重要性はよほど高いといえます。
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参考リンク
マスコミの誤解だった「ミカンは肌によくない」|食の安全|JBpress
柑橘類とメラノーマのリスク増加との関連性 | 海外がん医療情報リファレンス
ソラレンの分子構造から予想されることについて書いてみた | ケミストが作ったお役立ちサイト
柑橘系果物、大量摂取は肌の大敵? 「皮膚がんリスク36%増」と米論文 (1/3ページ) - SankeiBiz(サンケイビズ)